彼女は嘘つきだった。

ぼくは彼女に嘘をつかれるたびに警戒するのだが、
すっかり忘れたころにまた、同じような嘘に騙されてしまうのだった

たどえは、いつだったか、彼女はこんな風にぼくに言ったことがあった。

「気をつけたほうがいいわよ」

「気おつけるって何を」

「世界の人間の、五人に一人はテレパスなんだから」

「ほんとうかな」

「ほんとよ。私確かめたんだもん。」

「どうやって?」

簡単なのよ、と彼女は言った。

「怪しいと思ったらその人の前で口には出さずに、こう考えてるの。
『あ、肩に蜘蛛がたかってる』ってそれで、
驚いたような顔で自分の肩を見たら、その人はテレバスよ。」

「確かにそうだけど」

「人混みでそれをやるとびっくりするわよ。
周りでたくさんの人たちが慌てて自分の肩を見るんだから、ぞっとしちゃうわ。」

そこまで言われるとさすがに心配になってくる。

Posted by B정상